専務 松井
中国で生産されるおもちゃが多い中、オビツ製作所は、海外はもちろん国内の同業者でもできないような難しいものにも全て取り組んできました。ソフビを作るときにはまず原型を作るのですが、原型が出来上がってから直しが入るのは原型師さんにとっても大変なことです。そこで我々は原型を仕上げる前に、どこで分割すればお客様が理想とする仕上がりに近づくかを考え、50年以上に及ぶ彩色・成型経験からアドバイスをさせていただきます。かつては金型が出来上がると、まずは私が工場で成型を行い、気泡が出ない抜き方などを研究してからスタッフに教えるようにしてきました。今ではスタッフ全員、その技術を身につけています。中には物理的にどうしても作れない形もありますが、できるだけお客様の希望の形状を変えないように、他で断られたというものでも、なんとか作る方法を編み出そうという心構えで取り組んでいることが、我々を選んでいただける理由なのかな、と思っています。そんなクオリティと安心感が“Made in Japan”のものづくりの信頼につながり、今では香港、中国、タイ、フランス、アメリカからも繰り返し注文を頂くようになりました。納品の際には「さすがオビツだね」と言っていただけることも多いです。
第一製作部 菊池
ソフビを作るときは、完成したものを置く場所をもお客様にヒアリングします。というのも、年々夏の気温が上昇していて熱を加える事で柔らかくなるソフビは倒れてしまうこともあるんです。海外の暑い国の店頭で屋外に近い場所に置きたいという場合には、別の素材を進めることもあります。そういったことまで細かくやりとりしてお客様が満足のいくものを作っていきたいと思っています。また著名な現代美術作家さんの作品もいくつか担当してきました。当社の工場に作る様子を見に来られる作家さんもいらっしゃり、ソフビを通じてそういった方にお会いすることで刺激も受けています。ソフビの生産は構造上、金型からの引き抜き作業のために成型上最適な部位でパーツを分割しなくてはなりません。そのため普通はできるだけ目立たないように分割部分を決めるのですが、とある作家さんは、それを逆手にとって、あえて分割を考慮したデザインにされたのには驚きましたね。ソフビの製作をきっかけに、分割構造をご自身の作品にも取り入れたともおっしゃっていました。またアパレルの方が乳白色のソフビでメノウのような作品を作ったり、北米のアーティストからも繰り返し依頼を受けたりなど、アートの表現としてソフビが使われることも増えています。